ベンチャー企業のノウハウ保護か特許取得かの判断

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ノウハウ秘匿という選択

hitoku-riyuu(平成26年 中小企業等知財支援施策検討分析事業報告書 帝国データバンク)

上のグラフは、特許出願を最小限に留める中小・ベンチャー企業に対してその理由を聞いたものです。グラフからわかるように、中小・ベンチャー企業では技術流出とコストを懸念して出願を抑制する傾向があります。

技術流出を懸念

特許出願すると、発明の内容が出願から1年6カ月後に世に公開されます。公開された特許は、以下のサイトから誰でも検索することができます。この公開を技術流出と懸念して出願を控えると考えられます。

【リンク】特許情報プラットフォーム

日本で出願した特許は、日本国内にしか及びませんが上のサイトには世界中からアクセスすることができます。実際に、中国などの海外企業から技術を模倣されたという事例もあるようです。これを防ぐためには、模倣されるおそれのある国で特許を取得するしかありませんが、多額の費用がかかるためベンチャー企業には負担が大きいでしょう。

このような事態を考えると、ノウハウとして社内に秘匿しておくことが良いとも考えられます。

コストの削減

1件の特許を取得するまでには、おおよそ70万円~の費用がかかります。複数の特許を出願してすべてを権利化するとなると、数百万円となってしまいます。

出願コストを抑える方法としては、ベンチャー企業や個人発明家の場合には、特許庁の審査請求費用が1/3になる減免制度があるため、積極的に活用しましょう。各自治体でも、特許取得のための補助金制度があり、以下のサイトで調べることができます。

【リンク】日本弁理士会 助成金制度

不正競争防止法によるノウハウ保護

技術をノウハウとして秘蔵するためには、不正競争防止法による保護が考えられます。不正競争防止法上の営業秘密として認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 事業活動にとって有益な情報であること(有用性)
  2. 公になっていないこと(非公知性)
  3. 秘密として管理されていること(秘密管理性)

多くの場合に問題となるのが、秘密管理性です。例えば、ネットワーク上に営業秘密データがある場合には、アクセスできる人を制限する、パスワードを設定するなどの方法があります。紙の文書の場合には、鍵のかかった書庫に保管されていて、その鍵は特定の人が管理しているなどです。

不正競争防止法として保護されると、例えば、会社を辞めた社員が営業秘密を他社に売り込んだ場合に、その社員に対して法的措置を取ることができます。

特許取得という選択

patent-kouka(平成26年 中小企業等知財支援施策検討分析事業報告書 帝国データバンク)

上のグラフは、ベンチャー企業等が積極的に特許を取得した結果、どのような効果があったのかをまとめたものです。最も顕著な効果としては、やはり模倣品・類似品の排除のようです。

模倣品の排除と市場独占

特許を取得して、積極的に製品やホームページで「特許取得済」と記載することで他社の模倣を予防できます。特許を出願しただけでも「特許出願中」と表記して模倣を未然に防ぐことができます。

特許を取得する上で大切なことは、「容易に回避されない特許にする」ということです。簡単に回避されてしまうと、容易に模倣を許してしまう結果になるため、出願書類、特に後に権利範囲となる特許請求の範囲の文言は入念にチェックしましょう。

信用力の向上

特許を取得することで、対外的に自社の技術が優れていること示せます。営業でも、顧客に対して特許製品であることをアピールできます。

特許を持つ企業の利益は、特許を持たない企業の2倍というデータがあります。これも、特許で他社を排除するとともに、上手く営業に使って利益に結びつけた結果でしょう。

特許と利益率

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上記は、特許を保有している企業と保有していない企業との営業利益率の差です。特許あり(3.5%)の起業の営業利益率は、特許なし(1.8%)の企業の営業利益率の2倍になっています。現実問題として、特許を出願したからすぐに売上が上がるということではありませんが、少なくとも特許取得に積極的な企業のほうが高い利益率を保持しています。

これも、上で述べたような特許による独占的な使用と他社の排除により、市場を占有することができたためと考えられます。特許の出願には、一時的には多額の費用がかかりますが、売上への寄与利率から考えるとそんなに高くないかもしれません。

まとめ

特許を取得するか、ノウハウとして秘匿するか、の選択は難しいですが、容易な模倣を避けるために、核となる技術のみノウハウとして保護し、周辺の技術を特許で固めるということが考えられます。形状・構造など容易に模倣されてしまう発明は特許として保護し、物の製造方法などは営業秘密とするなどの方法もあります。

いずれにせよ、どのような基準でノウハウと特許とを選択するかについてしっかりと決めておくことが大切です。

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