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【質問】
先使用権を主張するためには、どのような資料や証拠を予め準備しておけばよいのでしょうか?

 

発明を特許出願せずに秘匿しておく場合には、他社に特許を取得され自らが実施することが出来なくなるリスクがあります。その場合には、先使用権を主張することが対抗策の一つです。

まず、先使用権を主張するためには以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 他社の特許出願の内容を知らずに発明したこと
  • 他社の特許出願の際に事業の実施又は準備をしていること

もっとも大切なことは、すべての外部や内部のやりとりを書面で残しておくことです。電話だけではなく、メールや議事録等で文字起こししておきましょう。

先使用権を主張するためには、以下のような文書が証拠となりえます。

1.物自体を保存しておく
公証人役場で、私署証書に確定日付を付してもらいます。物を入れた容器に私署証書を貼り付けて境目に確定日付印を押印してもらいます。

【リンク】先使用権制度の活用と実践(特許庁)

2.映像を残す
映像を撮影したDVD等を上記2の方法で保存する。

3.見積書・請求書・納品書
何に対しての見積書や請求書であるのかを明確にしておく必要があります。製品IDなどを記載しておきましょう。日付や相手先の名前も必ず記載します。

4.設計図や仕様書
各図面には作成日を記載し、検図や承認の押印処理を行い適切に管理します。裁判例によると、社内の文書よりも、第三者に対して提示された書面のほうが証拠能力が高くなります。

5.研究ノートやラボノート
書き換えできないボールペンを使用し、日付・サインを記載します。余白には斜線を引いておいて、ルーズリーフではなく、差し替え不可能なノートを使用します。

一般の企業では、これらの書類を定期的にまとめて封筒等に入れ、確定日付をもらい所定の期間保管しています。

もっとも証拠能力が高いものは、事実実験公正証書と言われています。事実実験公正証書は、20年間公証人役場に保存されるため、改ざんされることがありません(公証人法第35条)。

電子データであれば、電子書名やタイムスタンプのサービスを利用することも有効です。時刻認証業務認定事業者(TSA)が時刻の認証サービスを行っています。

【リンク】一般財団法人日本データ通信協会