特許出願のメリット

特許の取得には、主に以下のメリットがあります。

  1. 他社のコピー防止
  2. 販売中止のリスク回避
  3. 製品の信頼性向上
  4. 他社の特許取得防止
  5. 見えない技術の財産化

他社のコピー防止

特許を取得することにより、他社が特許発明を実施することができなくなります。これにより、競業他社の製品のコピーを防止できます。

競業他社が特許発明を実施した場合には、即座に停止するように求めたり(差止請求)、損害賠償を請求することができます。

特許は電子図書館で公開されているため、他社が特許を取得した分野へ参入する際の参入障壁となります。つまり、他社は「この分野は特許で保護されているから、新たな製品を開発することは困難だ」と判断し、新規参入を断念することがあります。

競合が特許の回避を考えた場合、さらなる研究開発が必要となることから製品のリリースがさらに遅れます。競合他社の市場参入が遅れている間に、自社で売上を伸ばしシェア拡大を図ることができます。

特許取得には数年程かかることから、新規製品の発売が特許の取得に間に合わない場合には、「特許出願中」と表示することにより他社を牽制し模倣を未然に防止することができます。

特許は登録時に権利範囲が確定しますが、登録前は権利範囲が確定していません。他社は、出願中の特許に近似する製品開発を行った場合、権利範囲が確定したときに侵害となるリスクがあるため躊躇します。これにより、競合の市場参入を遅らせることができます。

ニッチな市場であれば、複数社で製品を作るために必ず必要となる必須特許をパテントプールとして独占的に保有することで、第三者がその市場に参入してくることを抑えることができます。そうすると、必須特許を持っていない競合他社は、市場に算入することすらできません。

販売中止のリスク回避

原則的には、特許は特許権者(つまり特許出願人)のみが実施することができます。従って、新規製品を発売して間もなく特許侵害の警告が届いて、新規製品を製造できなくなるというリスクを回避できます。

また、特許発明を実施することを他人に許諾することができます(専用実施権、通常実施権)。許諾の際には、ライセンス収入を得ることも可能です。

例外として、その特許が他者の特許を利用している場合には、たとえ特許権者といえども自由に実施することはできません。「利用」とは、自社の特許を使用するには、必ず他社の特許を使用しなければならない状態を言います。

自社製品の信頼性向上

特許を取得できたということは、その発明は技術的に最先端であり、それに対して国がお墨付きを与えたということです。従って、顧客に「特許取得済」と説明することで、製品の信頼性向上という営業上のメリットがあります。

特許製品が他社の特許を侵害している製品であるという可能性も低くなり、顧客も安心して製品を使用することができます。

自社製品は、特許製品であるというステータスを備えるため、経営者、開発者、及び現場の作業員の士気向上に繋がります。

さらに、特許を取得できるということは、会社の技術力が高いと判断されるため、融資を受けやすくなり資金を調達し易くなります。

競業他社の特許取得防止

発明の内容は、出願してから1年6カ月で公開されます。つまり、特許を取得する過程で、発明が世間に公になります。

発明が公開されるということは、競業他社は同一の特許を取得することが出来ないということを意味します。つまり、他社に同一の特許を取得されることを防止できます。
さらに、公開されている特許は、特許の審査の過程で特許を付与して良いか否かの判断材料となります。これにより、発明の内容が完全に同一でなくても、競業他社が近い発明の特許を取得する際の障壁となります。

見えない技術の財産化

技術力とは、目で見ることができない無形の財産です。特許を取得することにより、その技術が財産として企業に蓄積されます。この積み重ねにより、顧客から見ても優れた技術力を備える会社であることがわかります。

さらに、優れた技術を備える会社であってもその技術は個人に属していて、会社が備えているわけではありません。会社を出願人として特許を出願することで、その技術を会社に帰属させることができます。

特許出願のデメリット

特許出願の主なデメリットは、以下です。

  1. 発明内容の公開
  2. 権利取得までの期間
  3. 金銭的負担

発明内容の公開

発明の内容が世間に公開されてしまうというデメリットがあります。特許とは、「発明を公開する代償として、独占的に発明を実施できる」という制度です。もし、発明を公開したくない場合には、ノウハウとして自社で管理します。

ノウハウとして管理した場合には、不正競争防止法で技術情報を保護することができます。ただし、保護されるための要件は、難しい場合があります。

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       ベンチャー企業のノウハウ保護か特許取得かの判断

また、日本で公開された特許を見て外国で技術を真似された場合には、日本の特許は効力が及びません。このような事態を防止するためには、外国においても特許を取得するしかありません。

審査される特許出願のうち、特許となるのは約60%となっており、特許を取得できなければただ技術が世に公開されただけになります。ただし、他社を牽制するという意味では全く無駄ということはありません。

時間がかかる

特許の出願から権利を取得するまでは、数年程の期間がかかります。ただし、早期審査制度を利用することによりこの期間を大幅に縮めることができます。(特許出願から権利化までの手続はこちらをご覧ください。)

早期審査制度を利用するためには、実際に発明を使用することが必要等、条件を満たす必要があります。早期審査をご希望の場合は、適宜ご相談ください。

金額的負担

特許を取得するためには、特許事務所に払う書類の準備費用や特許庁に払う費用等、特許取得までにおおよそ100万円以上かかると考えられます。

ただし、各自治体の補助金制度(詳しくはこちら)を申請することにより、出願にかかった費用の約半額程度が交付されます。

個人発明家や中小企業であれば審査請求料や特許料の減免を受けることができます。これにより、特許庁に支払う料金の一部が1/3に減額されます。

金額的には高いとも思われますが、自社製品が製造できなくなった場合や仕様変更等に伴うコスト増を考慮すると、一概に高いとは言えないかもしれません。

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