従業員(元従業員)による技術情報の漏洩

従業員の技術情報漏洩の対策

情報漏洩には、様々なルートがありますが、以下に示すように従業員や退職者による情報漏洩が7割を占めています。ウィルス等による外部からの漏洩は僅か5%程度となっており、おおよそ9割が人を介することによって外部に漏れています。

(出典:営業秘密の保護・活用について:経済産業省)

一旦漏れてしまった情報はもとに戻すことはできないため、大切な技術情報はしっかりと管理する必要がありますが、万が一漏洩してしまった場合には以下のような対応を執ることができます。

不正競争防止法による対応

技術情報が従業員によって他社等に漏洩されてしまった場合には、不正競争防止法により法的措置を執ることができます。具体的には、損害賠償請求や差し止め等の措置を執ることができます。

差止請求については知ってから3年以内又は20年以内に請求しなければなりません(不正競争防止法第15条)。また、差止請求に加えて侵害品の廃棄等を求めることができます(不正競争防止法第3条第2項)。

近年では、新日鐵住金の元社員がポスコにトランス用の電磁鋼板の製造プロセス等を漏洩して数億円の報酬を受け取ったとして問題になりました。

営業秘密

不正競争防止法の保護を受けるためには、技術情報が法律上定める営業秘密に該当することが要件となります。営業秘密とは、技術情報だけでなく顧客情報や独自のノウハウなど幅広い情報が対象となります。営業秘密と認められるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 有用性
  • 非公知性
  • 秘密管理性

有用性とは、事業活動にとって有益な情報であることを言います。技術情報に限らず、経費の節約や経営効率改善に役立つものであれば有用性を満たします。

非公知性とは、公になっておらず一般に入手することができないことを言います。その企業独自の情報であれば該当します。

秘密管理性ですが、企業内で営業秘密として管理されており、従業員に対して明確にこのことがしめされていることが必要です。営業秘密に該当するか否かで争点となるのは、この秘密管理性であることが多いです。

【関連リンク】営業秘密(経済産業省)

その他の法律

上記の営業秘密に該当しない場合であっても、個人情報保護法や、電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2)、背任罪(同法第247条)、横領罪(同法第252条)などに該当する可能性があるため、多面的な検討が必要となります。