ブランド要素と商標権

ブランド要素

ブランドは、顧客が企業又は製品を識別するための標識であり、コトラー教授によるとブランドは以下のように定義されます。

ブランドとは、個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ

ブランドを構成するのは、以下の6つの要素があります。

  • ネーム・ロゴ
  • パッケージ・デザイン
  • スローガン
  • キャラクター
  • 色彩
  • ジングル(音)
  • 香り

私たちは、普段生活するうえで商品を手に取るとき、あるいはサービスを受けるとき、必ず企業名のブランド、又は製品・サービスのブランドを確認します。

トイレットペーパーであれば、エリエール、スコッティ、スーパーのプライベートブランド等、様々な種類があり、ネーミングを見て商品を取捨選択しています。ホテルに泊まるのであれば、ホテルオークラ、東横イン等、ホテル名によって使い分けを行っています。

ブランドとは、企業と消費者とを繋ぐものであり、消費者が他企業と識別するための標識です。この標識が競合に真似される、又は使用できなくなると、企業のブランド棄損に繋がります。このような事態を防止するために、商標登録が有効です。

以下、それぞれのブランド要素と商標の関係性について説明します。

ネーム・ロゴ

ネームとは、企業の名称、商品・サービス名であり、ブランド戦略としてネーミングはとても重要です。ネーミングは、目で見る、耳で聞く、という2つの感覚に訴えかけるため、他のブランド要素と比較すると消費者が記憶に残りやすいです。

ロゴについても、消費者が視覚で認識して企業や製品・サービスを識別しています。ロゴには、企業名や商品名を配したもの、記号のみなど様々な種類があります。企業や製品のイメージに合うロゴを制作し、マーケティング活動によって広く消費者に訴えかけます。

ネームとロゴ、いずれも商標登録が可能であり、最初に検討すべきです。商標は、一般的な名称であると判断されると拒絶されますが、造語であればそのような事態は起こりません。調査を行い、先に似た名称が商標登録されていない場合は、商標登録が可能です。

パッケージ

パッケージは、消費者の視覚、触ったときに感覚に訴えかけて記憶させます。例えば、オードリーという洋菓子はパッケージデザインが非常に優れており、デパ地下等でとても人気があります。

パッケージの外観は、立体商標として登録することができます。ただし、その立体的形状の範囲を出ないと考えられる場合、例えば、単なる無地の直方体の立体商標等は、登録を受けることができません。

また、パッケージの外観の意匠登録も可能です。商標の場合は費用を支払うことで永続的な権利維持が可能ですが、意匠登録の場合は登録から25年で権利が消滅します。定期的にデザインを一新するのであれば、意匠登録も有効な手段となるでしょう。

パッケージの一部に特徴がある場合には、部分意匠としてその特徴的な部分のみで意匠登録を受けることも考えられます。

スローガン

スローガンとは、その企業の価値観や製品のコンセプトを一言で表現したコピーです。多くの企業は、ブランドスローガンを設定して、消費者に企業理念を訴えかけています。

商標では、原則としてキャッチコピ・スローガンは登録できません。ただし、宣伝広告や企業理念・経営方針を表すものではなく、造語として認識される場合には登録されているケースもあります。

キャラクター

ブランドにはキャラクターが付されていることが多いです。熊本県の「くまもん」のように、地域活性化のためのゆるきゃらも全国的に存在しています。

くまモンをはじめとするキャラクターは、その名称だけでなくキャクターの図柄が商標として登録されています。キャラクターは、様々なポーズの図柄がありますが、最も代表的なポーズで登録することが望ましいです。着ぐるみの立体商標、動きがある場合には動きの商標、としても登録することが可能です。

色彩

ブランディングでは、ブランドイメージに合うイメージカラーを設定します。配色、明るさ、色合い等色彩を構成する様々な要素を組み合わせて企業に合う色彩を設定します。

商標では、色そのものも登録が可能ですが、ハードルがかなり高いです。2015年より色彩の商標が認められましたが、登録されたのはわずかに8件でほとんどが拒絶されています。有名なものだと、MONO(登録第5930334号)やセブンイレブン(登録第5933289号)があります。その色彩が全国的に著名であって誰もが知っていると判断されると、登録になります。

ジングル

ジングルとは音によるメッセージで、消費者の聴覚に訴えかけます。例えば、PCパーツの「インテル」の音はCMで誰もが一度は聞いたことのある音だと思います。

音についても、商標登録が可能です。例えば、「やめられないとまらないカルビーかっぱえびせん」(登録第5886594号)、「クラシあんしんクラシアン」(登録第5906704号)等があります。

香り

香りも、ブランドを構成する要素の1つとなります。人間の感覚である嗅覚に訴えかけることにより消費者に印象付けます。消費者がその匂いを感じると、再びその物事に関連する記憶が呼び戻されます。香りを利用したマーケティング活動は日本では主流ではありませんが、今後発展する可能性は十分にあると思います。

香りは、残念ながら日本では商標登録ができません。2015年に色や音等の商標登録が認められた際、香りの商標についても検討されましたが、導入を見送られました。これは、日本での企業のニーズも少なく、諸外国でも登録事例が少ないという理由でした。