職務発明規定の改正と特許料引き下げ

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職務発明規定の改正

概要

2015年7月3日に、職務発明改正を含む改正特許法が閣議決定されました。従来は、従業員が行った発明は、会社が出願できる権利(特許を受ける権利)を譲り受けて特許を取得するという形式でしたが、改正後は、発明完成時点で権利を会社に帰属させることができます。つまり、従業員から権利を譲り受けるというステップを省いて、いきなり会社が特許出願できます。

この場合には、会社では職務発明規定などで、発明完成時に会社が権利を譲り受ける旨を定めておく必要があります。従業員は、会社から相当の金銭をもらうことができます。

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【引用】経済産業省 法律案概要(参考資料)

大企業の99%は職務発明規定を定めていますが、中小企業は20%しか定めていないため、大半の中小企業の場合では特許を受ける権利は従業員のものとなります。

背景

有名な職務発明の訴訟である青色発光ダイオード事件では、ノーベル賞受賞者の中村修二さんが「発明の対価が足りない」として会社を訴え、一審で会社側に200億円の支払いが命じられました。会社側としては、このような訴訟が乱発されると困るため発明を予め会社のものとしておきたいという要望があったようです。

さらに、発明者に対する対価の支払いしか認められておらず、開発チーム全体の報酬や昇進などの報酬は法律上認められていませんでした。今回の改正では、このあたりも考慮され、対価だけでなく経済上の利益であってもよいとされています。

企業側は今回の改正に伴い、職務発明規定の改正を考えているようです。製薬会社では、大勢の研究者が行う新薬物質のうち、その中の一部が多くの利益を生み出すという構造となっています。従来は、発明者のみが対価をもらえましたが、法改正により会社側で柔軟に対価を決めれるため、不公平を解消することができます。

アステラス製薬は、「現行はたまたま当たりを引いた数人の発明者のみ多額の対価を支払うが、チームワークを考えれば協力者にも報いられる仕組みに変えたい」という。
【引用】日本経済新聞2015年7月4日

特許料・商標登録料引き下げ

特許料の10%引き下げ及び、商標登録料の25%引き下げ、更新登録料を20%引き下げが決定しました。また、特許協力条約に基づく国際出願の調査では、出願言語に応じて、手数料の上限額が決定されいます。