初心者のための欧州特許出願解説

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欧州特許出願とは

欧州特許出願とは、欧州特許庁(EPO)が審査を行って登録された後、欧州各国に移行して国ごとに特許を取得する制度です。従って、1つの出願でヨーロッパ全土に有効な特許となるわけではありません。出願可能な言語は、英語・ドイツ語・フランス語です。日本語で出願することもできますが、所定期間内に英語・ドイツ語・フランス語のいずれかの翻訳文の提出が必要です。

以下は、欧州特許庁から移行できる国です。
イギリス、ドイツ、フランス、スペイン、オーストリア、スイス、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、モナコ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、トルコ

出願方法

パリルート

日本に出願してから1年以内に、日本と同じ内容の特許を米国に出願することができます。パリ条約に基づく優先権と呼ばれ、日本の出願日と同じ日に欧州特許庁に出願したとみなされます。

欧州に出願する際は、日本に出願した日本語の明細書を英訳しなければなりません。翻訳にはおおよそ1~2か月を要するため、欧州での特許取得を希望する場合は早めに手続を進めましょう。

国際特許出願

国際出願は、出願から審査までの手続を国際調査機関が行い、その審査結果を持って欧州に移行するという制度です。国際特許出願なので、欧州以外の国にも移行することができます。国際特許とは、出願から審査までの手続きを一括して行う制度であり、俗に言う「世界中で有効な国際特許」ではありません。

日本語での出願も可能であり、国際出願した後30カ月以内にどの国に移行するかを決めます。このとき既に審査結果が発行されているため、結果次第でどの国で特許を取得するかを決めることができます。欧州に移行する際は、英語の翻訳文を提出する必要があります。

直接出願

欧州への出願方法として、英語で出願書類を作成して直接欧州に出願することができます。ただし、出願時から英文を容易する必要があり、あまり使われない方法です。もし、欧州でしか製品を製造販売しないという場合には良いでしょう。

上記は、欧州特許庁に出願するケースを想定していましが、もちろんドイツやイギリスなどの国に直接出願することもできます。国ごとに審査請求の有無や翻訳文の提出など制度の違いがあります。

出願の手続

出願から特許まで

日本の出願と同じように、出願後に審査が行われ、まず拡張サーチレポート(EESR)という審査結果が通知されます。これには、特許性や形式的不備の有無などが記載されています。これに対して、出願書類の補正を行い特許になるように対応します。応答期間は、拡張サーチレポートが公開されてから6カ月です。

それでも特許にできないと判断された場合には、通知(Communication)が発行されます。出願人が拒絶理由通知に対して補正してもまだ特許にできないとされた場合は、複数回通知が発行されることがあります。これらの応答期限は発行されてから4か月ですが、さらに2カ月延長することができます。

欧州出願では、日本の事務所費用に加えて欧州の事務所費用がかかるため、権利化までの金額も高額になります。欧州の出願時には、委任状などのサイン書類が必要になります。審査の結果、特許として登録されると、権利期間は欧州特許の出願日から20年となります。国際特許出願の場合には、国際出願日から20年です。

費用

拒絶理由の応答回数や明細書の長さによってまちまちなので一概には言えませんが、1件の欧州出願を特許にするまでに、100万以上はかかるでしょう。中小企業のアンケート結果によると、1か国あたりの支払額の平均は、欧米が119万円でアジアが76万円となっています。