ノベリティ商品と商標権の侵害

ノベリティ商品

ノベリティ商品とは、企業が特定の商品の宣伝広告・プロモーションのために、ロゴや社名を印刷して無料で配布することを言います。例えば、街中で配布している会社名が印刷されたうちわ、展示会やイベント会場で無料配布している社名入りの文房具などがあります。

ノベリティ商品は、それ自体を取引の目的としておらず、あくまで会社名や会社の商品のプロモーションのために配布するものです。つまり、ノベリティ商品を渡すことが目的ではなく、ノベリティ商品に印刷された社名・商品名を覚えてもらうきっかけのために、一時的に商品を制作し配布しています。

商標権の侵害

音楽楽器の会社がノベリティ商品として「BOSS」と印刷されたTシャツを配布したところ、洋服について商標「BOSS」の商標権(登録第695865号)を有している会社から商標権侵害であると訴えられました(大阪地裁昭和62年8月26日判決、「BOSS事件」)。

裁判では、ノベリティで配布している商品は、その商品そのものが商取引の目的ではなく、広告媒体に過ぎないとして商標権の侵害を認めませんでした。

ポイントは、「無償で配布するか」ではなく、「商取引の目的たりえるか」という点で判断する必要があるため、タダで配るから商標権を侵害しても大丈夫、ではなく事案ごとに侵害の有無を検討する必要があります。

可能性は低いですが、ノベリティ商品を反復的に配布することにより、販促・プロモーションという枠組みを超えて、ノベリティ商品が商標の有する出所表示機能等を有していて識別力があると判断される場合には、侵害が認められるリスクがあります。

*出所表示機能・・・特定の商標が付されている商品・サービスは、特定の所から流出していることを示す機能であり、需要者から見たら「この会社がつくった(提供している)から安心」という見えない信用を有することを示しています。